- 平日フル稼働で客先常駐のフリーランスエンジニアでも家賃を経費にできる?
- 自宅を家事按分する最適な方法は?
- 持ち家のの場合は経費にするのは無理!?
自宅を作業場にしているフリーランスエンジニアが、適当に家賃を経費化していると、後で税務調査の対象になってペナルティを受けてしまいます。
私は本業のエンジニア業に加え、副業でブログ・Web開発・不動産など複数の収入を確立している個人事業主です。毎年、税理士さん監修の元、専門的で客観的なチェックを受けて確定申告をしてきているため、エンジニアの経費にできるできないの境界は把握しています。
そこでこの記事では、フリーランスエンジニア目線での「家賃の経費の計算方法」や「その他、経費にできるもの」を解説します。
この記事を読めば、エンジニア特有の家賃を含めた経費化の悩みを解決できます。
フリーランスエンジニアは家賃の30%〜40%を経費計上できる
【結論】フリーランスエンジニアは家賃の30%〜40%を経費計上できる
自宅の家賃を経費計上できる理由は、自宅を仕事場にしている事実があれば「事業に必要な支出」と主張できるためです。
自宅兼事務所は、仕事利用とプライベート利用が混じっているので、仕事で利用している割合を税務署からの客観的な視点で説明できる合理的な資料が必要になります。
「でも私は、平日フル稼働の客先常駐のフリーランスだから自宅の仕事利用は認められないよね…」という方も問題ありません。
フリーランスエンジニアであれば、自宅で技術調査をしたり、複業したり、営業・事務作業をしたりするケースはあるでしょう。それらの作業場所として自宅兼事務所の賃料は「事業に必要な支出」と主張できます。
「家賃の30%〜40%は事業利用できる」の根拠は人によりけりなので、税理士や税務署へ相談することをおすすめします。
とはいえ、「プライベート利用を超える事業利用比率を主張することは厳しい」というのが一般的な意見です。
「50%以上は自宅を仕事で使っている」と主張することもできますが、強気過ぎると税務署から目を付けられて、税務調査が入りやすくなります。このあたりは、あくまで自己責任です。
【アドバイス】 税理士の言いなりではなく、自己主張もしよう!
税法上、「事業利用とプライベート利用が明らかに区分された…」とあるため、税理士によっては「事務所が居住スペースから完全分離されていなければ経費化は無理」とアドバイスを受ける場合があります。
しかし現実的に、そんな独立型事務所を保有しているフリーランスはほぼいません。にも関わらず、私の観測の範囲では、約90%のフリーランスが自宅を経費計上している客観的事実があります。
「みんなが経費にしているからやるべき」というわけではないが、しっかりと根拠を持って自己主張していくことが健全な節税に繋がるぞ。
大前提として、フリーランスが経費計上をするには確定申告が必須です。こちらの記事を参考にしてみてください。
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家賃を経費にするための計算方法(按分方法)
フリーランスが家賃を経費計上するには、事業利用分とプライベート利用分で「按分」する必要があります。
会計処理上の「按分」とは、自宅などで仕事をするフリーランスが、事業用とプライベート用とを明確に分けられない場合に、ある一定の基準の比率で分けることです。
つまり、自宅である家賃は何か基準を設けて按分する必要があります。その基準を持つ方法は主に次の2つです。
- 【按分方法1】事業利用の床面積で按分
- 【按分方法2】事業利用の時間比率で按分
家賃の按分の考え方は「水道光熱費など」にも使えるよ。
持ち家であれば「固定資産税」「住宅ローン金利」などにも適用できます。
【按分方法1】事業利用の床面積で按分
最もよく採用されるのは、事業利用の床面積の比率から按分計算する方法です。
明確な面積の数値で根拠を説明できるため、税務署の理解が得られやすいのが特徴です。
「対象の部屋(場所)は、本当に事業利用しているのか?」がポイントになるので、客観的に説明できる資料の準備が必要になります。
一人暮らしの場合と5人の家族と同居する場合では、事業利用率は変わってくるので、必ず自身のケースに当てはめてシミュレーションしましょう。
以下が、事業利用の床面積の比率から按分計算する手順です。
- 100%事業利用の仕事部屋を決め、床面積を確認
- 一部事業利用の場所を決め、床面積を確認
- 自宅の総床面積から①②の比率を算出する
明確に仕事部屋が決まっていないケースは特に、その按分の根拠を税務署へ説明できるようにする必要があります。
【例】事業利用の床面積で按分算出する例
① 事業主の作業利用: 事業専用部屋100% (8.1㎡)
② 専従者(妻)の作業利用: 洋室50% (9.72 x 0.5 = 4.86㎡)
③ 打合せ、その他利用: リビングダイニング30% (19.44 x 0.3 = 5.832㎡)
④ 共通利用: 共通部50% (19.728 x 0.5 = 9.864㎡)
自宅兼事務所(70.11㎡)の占有率= (①+②+③+④ )÷70.11㎡ = 40.9% ≒ 40%
【按分方法2】事業利用の時間比率で按分
次に、仕事の稼働時間から按分計算する方法です。
たとえばワンルームでは、空間として区分することが難しいため、この方法を用いる場合があります。
仕事の稼働時間を税務署に証明する難しさがこの方法の難点なので、仕事時間の記録を取ることをおすすめします。
以下が仕事の稼働時間から按分計算する手順です。
- 一日の稼働時間を決める
- 月の稼働日数を決める
- ①②の月の総時間を比率で算出する
【例】事業利用の時間比率で按分算出する例
稼働時間: 計9.5時間/日
稼働日数: 計30日/月
24時間x 30日 = 計720時間のうち
9.5時間 x 30日 = 計285時間は、事業として稼働しているため39.5%(≒40%)が事業利用
持ち家だって経費計上できる
「持ち家の場合は経費計上できる?」の疑問に対しては、Yesです。賃貸と同様に事業利用している部分は、経費計上すべきです。
持ち家の場合で経費計上できる支出
持ち家を保有することによって発生する次のような支出に対して、事業利用率の分を経費計上することができます。
事業利用率の計算方法は、前章の「家賃を経費にするための計算方法(按分方法)」と同じです。
- 減価償却費
- 住宅ローン利子
- 固定資産税
- 火災保険料
持ち家を経費計上する際の注意点
持ち家を経費計上する際は、次の2点に注意しましょう。
【注意1】持ち家の住宅ローン元本は経費にできない
持ち家の住宅ローン元本は経費にできません。償却資産の対象になるためです。
【注意2】事業利用のスペースは住宅ローン控除の対象外になってしまう
事業利用比率に応じて住宅ローン控除の受けられる割合が変わってきます。
自宅を仕事場として事業比率分を経費化するため、実際に居住するスペース分の住宅ローン控除を受けられる割合が減ると認識しましょう。
- 事業利用比率が50%以上は、住宅ローン控除が受けられなくなる
- 事業利用比率が10%以下は、住宅ローン控除が全額受けられる
- 事業利用比率が10%〜50%は、その割合に応じて受けられる金額が減少する
上記の②か③のどちらが節税効果があるかは一概には言えません。次章を参考にシミュレーションをしてみましょう。
持ち家の経費化のシミュレーション
ここでは、持ち家を経費計上する場合のシミュレーションをします。
「持ち家の耐用年数」「固定資産税」「借入金の多さ」などの条件によって節税効果は変わってくるので、次の例を参考に各個人でシミュレーションすることをおすすめします。
一般的に高額な納税者であるほど、住宅ローン控除をフルで受けるよりも経費計上を優先した方が節税効果が高いと言えます。
家賃の按分根拠に基づき、水道光熱費も経費にできるため、更に節税効果は高くなる!
持ち家を経費化した場合の節税効果の例
(前提)
事業利用割合 = 40%
課税所得に対する所得税率(A) = 20%(前年実績より算出)
① 必要経費の増加額 = 6.96万円(下記総額 x 上記(A))
・減価償却費) 2000万円 x 0.02(耐用年数50年)x 40% = 16万円
・借入金利子) 22万円 x 40% = 8.8万円
・固定資産税) 10万円
② 住宅ローン控除の縮減額 = 0円(下記 a − b)
a) 全部が居住用とした場合の控除額 = 20万円(上限額)
b) 事業比率分を控除した場合の控除額 = 20万円(上限額)※
※ 借入金の年末残高が多いため、事業用分だけでも上限額は控除できた例
※ 居住の用に供していない部分に対応する借入金については、住宅ローン控除を適用することができない
持ち家の経費化した場合の節税効果 = ① − ② = 6.96万円
フリーランスエンジニアの経費(家賃以外も含む)
フリーランスエンジニアが経費計上できるものできないものをまとめました。
フリーランスエンジニアが経費計上できるもの
経費計上できるものは、税法上は次のように定められています。
- 総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用
- その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用
端的に言うと「税務署に対して、売上につながった根拠を説明できる支出」は、原則として全て経費です。
使用した経費がどの勘定科目に振り分けられるかを気にする方も多いですが、税額計算には影響がないので、そこまで気にする必要はありません。
フリーランスエンジニアの主な勘定科目の例
勘定科目 |
具体例 |
地代家賃 |
本記事で解説のとおり、事業利用する分の自宅の賃料・駐車場の賃料 ...etc が該当します。 |
水道光熱費 |
本記事で解説のとおり、事業利用する分の電気代、水道代、ガス代 ...etc が該当します。 |
新聞図書費 |
書籍代、新聞代、メルマガ購読代、ネットの有料会員代が対象です。 |
消耗品費 |
事務用品、オフィス家具、パソコンソフト ...etcが対象です。※1 |
通信費 |
電話代、携帯電話代、インターネット代、サーバー代、郵便代、送料 ...etcが対象です。 |
交際費 |
会議などの飲食代 ...etc が対象です。 |
外注費 |
業務の一部を外部委託して支出した費用が該当します。 |
租税公課 |
固定資産税、自動車税、事業税、印紙税 ...etcが対象です。 |
車両費 |
車を維持するために必要な費用。ETC代、ガソリン代、車検費用 ...etc。 |
支払手数料 |
振込手数料、事務所を借りる際の仲介手数料、税理士報酬 ...etc が対象です。 |
諸会費 |
フリーランス活動に必要なコミュニティに支払う会費が該当します。 |
支払利息 |
本記事で解説のとおり、持ち家の場合の住宅ローン支払の利息分は経費にできます。その他、事業に必要な借入をしている場合も同様に経費にできます。 |
広告宣伝費 |
フリーランスの営業活動に繋がるサイト運営のためのサーバー代、ドメイン代 ..etcが対象です。 |
減価償却費 |
固定資産を耐用年数に応じて少しずつ経費計上する勘定科目です。 |
雑費 |
その他の費用。 |
※1 デスク周りの環境を揃えるための経費は「消耗品費」などで経費化できます。次の記事のような、効率的でおしゃれなデスク周りも経費で実現できるのです。
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フリーランスエンジニアが経費計上できないもの
次のようなものはフリーランスが経費計上できません。
- 所得税・住民税
- 罰金
- 家賃の敷金(貸主に貸しているだけの資産)
- プライベートで使用した費用
「プライベートで使用した費用」の具体例
・スポーツジムの会費
・事業主の健康診断
・青色専従者(妻など)の健康診断
・仕事の出張ではないプライベート旅行
・家族が使う事務用品など
・食費
【おまけ】複業の活動費や、家族への給料も経費へ!
複業としての事業活動費や、家族の給料も経費化できると節税効果はとても高くなります。
エンジニアの労働収入一本では経費の適用範囲も限定的ですが、複業として事業ができれば、経費の適用範囲が広がるためです。
更に、事業の一部を家族に手伝ってもらえると、その家族を従業員(青色専従者)として経費化できます。
たとえば、月に10万円の青色専従者給与を妻に支払い、税率が20%と仮定すると、「10万円 x 12ヶ月 x 20% = 年間で24万円」の節税効果が見込めます。ただし、「その妻に月10万円相当の業務が発生していることを説明できること」が前提です。
複業で行うような事業は、自宅で行うことが多いと思うので、前述した家賃の事業利用比率も上げることにも繋がります。
複業は収入も多角化できて、節税もできる!経費化ができるフリーランスであればやらない手は無い!
まとめ
以上、フリーランスエンジニアが対応すべき「家賃の経費の計算方法」や「その他、計上すべき経費」を解説しました。
【結論】フリーランスエンジニアは家賃の30%〜40%を経費計上できる
家賃を経費化する按分方法としては…
- 【按分方法1】事業利用の床面積で按分
- 【按分方法2】事業利用の時間比率で按分
フリーランスになるメリットの一つとして「自分の裁量で経費が使える」という点が挙げられます。
そのメリットを最大限に活かすためにも、賃料も含めて経費にできるものは、積極的に経費にすべきです。
ただし、経費として計上するからには、仕事で使っているという客観的な根拠を説明できるようにしましょう!
以上、このブログでは、このように「会社員エンジニアがフリーランス独立して自力でお金を稼げるようになるまで」の役立つ情報を発信し続けていきます。
ではまた!
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